ふるさと昔っこ(畑則子)
嫁と姑
昔ある所にしゃ、なんともかんとも仲の悪い嫁ど姑ど居だもだけど。嫁っこときたら、はいって一言姑さ云った事無かったど。なんだかんだと口答えするど。姑も姑で、嫁っこのよい所ば一つも見ないでしゃ、全く欠点などばり探すもんだがら何時も言い争いしてるけど。
ある時嫁っこな、お寺さ相談に行ったど。昔はですね、寺親って云って何が困った事あればお寺さんさ相談しに行ったもんだんしどな。
『おっさんおっさん、聞いでたんしぇ。おら家の婆さまなばあまりにも根性悪りくで、おらな勤めたでも何もしぇねぁ。家出して行きたくても子供居るがら出で行かれない。まじおら家のあの婆さまよ、じならーって弱ってころっと死ぬような良い薬っこなど無いんしべが。』
おっさん、嫁のくどぎはなしな、だまーって聞いだ後で云ったけど。
『おっほ。んだらしゃお前俺ど二つ約束しぇな、そしたらお前さその薬っこ授けるがら。ひとつはな、曲った事でも間違った事でも、何でもかんでも姑さん(云ったら、はいって云え。口答えするなよ。それがらもう一つはしゃ、どうせ薬っこ効いで来れば、じならーって弱ってその中ころっと逝くなだんて、それまでの短い間だげでも、姑さんどご大事にせな、悔いの残らないように。親切にしてけるなだど。』
『分ったおしょうさん。おらあのお婆さんがじならーって弱ってころっと死ぬなだば、約束なばちゃんと守るんし。』
そう云って家さ行って、ご飯盛ってその上さパッパッて白え粉っこかげで食わせだど。でごってえままでおえだ、
『ほれぁ、婆さま召し上がってたんしぇ。』
『うぁ、婆さまだど。むしょうに親切だごど。ほほーっ、ご飯も美味しいでぁ。』
三日食べたて四日食べたて一週間食べたて、じならーどするどごろがますます元気になるけど。そのうち風邪っこ引いだなてばしゃ、たいした親切にして丹前掛げでけだりして扱かったけど。ばっぱ、気づいたど。
『ん、おれぁ間違ってらなー。こたに良いおれぁ家の嫁どごしゃ、なんであんなに意地悪ぐしたなだべ、おれも(根性悪るがった。』
風邪っこ直ってがら、朝舞のたじ町さ行って、赤い着物っこの反物買ってよ、
『ほら、これで小袖こでも作るだ。』
嫁っこまだ嫁っこでな、
『ええが、婆さま似合うが?』
なんて、たいした仲良くなったおだけど。
そしてる中うぢ、嫁も気づいたきぢだ。
『あーっ、おれ間違まぢがってらった。大変だ事ごどした。』
どーんがどがとお寺でらさはいいて、泣きなぎながら云ゆったど。
『おっさんおっさん、おら間違まぢがっていだったんし。どうがあのおら家えの良いい婆さまじゃっちゃ、じならーっと弱ってころっと死ぬ薬っこで無くねぁぐ、元気になって長生きながいぎするよた薬っこど取替えとっきゃでたんしゃ。』
『おーっ、どれぁどれぁどれ程なんぼ残のごってらど。』
なーんとしたば半分はんぶも無ぐなてらけどな。
『おめぁも頑張ったがばた事ごどや。良くえぐ気づいたきちだ。何も案じるあんぢ事こど無いねぁ、あれぁしゃ、そんた恐ろしい薬でも何でもねぁ。たんだの片栗粉かだくりこなぇんて。どんなにしてもなぼしたて死なねぁど。』
おっさんそう云ゆったけど。それがらたいした仲良くねがえぐなったけど。良えがったんしな。トッピンパラリノプ。
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