ふるさと昔っこ(畑則子)
赤んぼになった婆さま
昔ーし、ある所に爺さど婆っぱと居だっけどー。爺さ山さ柴かりに行ったけど。
「このごろ、腰痛でゃだが眼クチャクチャじだがで、若ぎゃ時みでゃに・・・なやーっ。」
って独り言いいながら、仕事したば、たいした喉乾いで、爺さな、何処がに岩清水飲む・・無ゃーだべがど思って探したば、崖の岩の間さ苔っこ生えで、その苔っこ伝わってタチーッタチーッタチッと清水落ちでだけど。
「おやおや有りがでゃごど。」 と行ってみだば、清水の下さこの位ばりの水溜まりっこ出来ででな、爺さま、 「あーこれはじんじょで、山の神様のお恵みだだば。」 とて、こーやって両方の手っこで掬って水一口飲んだど。したーんば、あれ程痛でゃがった腰しゃ、シャンと伸ったけど。あらーっ不思議だごど、ど思ってもう一口飲んでみだば、今度ばクチャクチャっじがった眼シャキっと開いで、まんじーっ良ぐ見るぐなったけど。それで、その水溜まりさ我の顔っこ写して見だば、なーんと若ぎゃ頃の我写ってだけどよ。
「あらー有りがでゃごど。」 と家さな、戻って、
「婆さま婆さま今来たでゃー。」 戸を開げたば婆さま出ひゃって来て、上げ下げこっち見で、
「どちらさんだぎゃー?」 って云うど。
「なーんに俺だべった婆さま。」 って云っだたて、なぼー云っだたて分がらなゃけどよ。
「あやー、まじよー俺だべた。」 って云ったば、
「そう云われれば俺らなーんだが若ぎゃ時に行ぎ会ったごとあるよんだ気するなー。」 って云ったけど。爺さまがら訳聞いたばな、婆さまよ、
「あらーそえった良え水っこだば、俺らも飲みでゃおだな爺さま。」
「んだば婆さま、あまり良ぎゃに若ぎゃぐならなゃたでええども、丁度今の俺ど釣り合う位に若ぎゃぐなるように、明日連れで行ぐぇって今日まず寝れはー。」 夜中に婆っぱ眼覚ましたば、隣さ若者みでゃに若ぎゃ爺さま寝てるべた。我まだ寝返り打どーと思ったば、腰痛でゃだが膝かぶ痛でゃだが、なんとこれなば残念になって婆っぱ一人して山さ行ったど。
「俺ら、うんと若ぎゃぐなってきて爺さまどご喜ごばせるど。」 爺さま起ぎだば婆さま居なゃもんだがら、
「・・・俺りゃえの婆さましゃー、一人で山さ行ったな。」 と行ってみだど。爺さま、
「婆さまー、迎ぎゃに来たどー。」 なんぼ叫んだたて返事しなゃど。とうどう清水の辺りまで来てな、
「婆さまー、迎ぎゃにきたどー。」 っと云ったど。返事しなゃで、その代わりホォギャホォギャホォギャって赤子の泣ぎ声するど。見でみだば婆さまの着物さ包るまがってしゃ、赤子ホォーンギャだとで泣いでだなだけど。爺さま、その婆さまどご家さ連れできてな、たいして可愛がって育てたど。 トッピンパラリノプ。
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