ふるさと昔っこ(畑則子)
二人分
昔むがしあったけど。ある所さ少し脳味噌の足りねぁ男居だっけど。二十五程になったばしゃ、なんとしたごどだが、色っけなのばし強くて、おなごの穴なのばり追って歩ぐもだがら、まるでさがりのついだ犬みでぁんたどて、ワン助ってあだ名こついだけど。おどどあばど苦慮したど。
『あばや、おらえのワン助しゃ、よその娘さんさ失礼な事したらなんとする。』
『んだがらしゃおど、何とする。』
『んだな、これなばしゃ、なんだかだ言わねぁで、おなごなば何でも良いだろうて云ってしゃ、嫁っこ貰うべし。』
あば次の日、仲人婆さまさ願い事しに行ったど。
『婆さまばっぱ、おら家のワン助どさしゃ(ほらあばだてワン助だなていうなだもな)、おなごなばどんなおなごだて構わないがら、文句言わねがら、嫁っこ世話してたんしぇ。』
ばっぱも早いもので、十日もしない中、西山の陰の方がら雄物川の方がらなだがな、嫁っこ連れできたけど。嫁っ子ぁ馬っこさ乗って来たっけど。真っ白い花嫁衣裳着てしゃ、角隠しでふかぶかーど顔っこ隠して、馬っこさ乗ってきたごでぁな。ほれぁ、むがしの結婚式てば、樽っこ背負い、な、ほんとなば荷引きって前にもってくるのだども、話し早ぐ纏まったがらよ、油単かげだ馬車さしゃ、花嫁道具沢山積んでに引き、それがら仲人爺さまど仲人婆さま、人手、親類、一番後ろの馬っこさおき付け婆さま、すまして乗ってだけど。峠越えて村さ入ったばな、
『おやや。ワン助どさ嫁っこ来たど。』
村の人達、道の両側さ勢ぞろいして嫁見どではったばしゃ、荷引き
『ながもぢうだなど披露してみるはや。』
けたって唄こ歌いだしたけど。歌っても良いですか拍手
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